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建築家の独り言
「手間」をかける
三谷幸喜脚本監督の映画「みんなの家」を以前ビデオを借りてみたことがあったのだが、テレビでも放映していたので、職業柄また見てしまった。設計者として新進気鋭のデザイナー役を唐沢寿明、建て主の妻の父でもあり施工をした大工役を田中邦衛が演じている。妥協を許さないデザイナーのプライドと職人の誇りがぶつかり合って、何かと対立する。そんな二人のあいだで、ココリコの田中直樹と元フジテレビアナウンサーの八木亜希子演じる建て主夫婦はおろおろするばかり。
一般的には大工が設計者の意向を無視して勝手に施工をすることはあり得ないが、建て主の親が大工という特殊な設定で対立させてストーリーを盛り上げている。映画的には最初ぶつかりあっていた二人が最後はお互いを認めあうことになるのであるが、その過程で、大工がカッコだけだと馬鹿にしていたデザイナーから、部品をカタログの中から安易に選んでいたり、壁にビニルクロスを貼ることに何の疑いも持たなくなっている自分に気づかされる場面がある。三谷なかなかわかっているなと感心した。家づくりにおいて、「手間」をかけることの大切さが、対立していた二人を結び付ける共通の感覚として取り上げられていたのが印象に残った。
続いてNHKの「宮廷女官・チャングムの誓い」を見た。これは建築とは関係なく、主演者の清楚さに引かれてである。韓国の宮廷の料理の話で、今回のメインテーマは、料理には「まごごろ」と「手間」が大事だという話だった。ものづくりには、相手に喜んでもらいたいという「まごころ」と「手間」が大事だという話を偶然続けて見たので、前回に続くテレビネタだが取り上げることにした。ドラマでは野菜や米を時間と手間をかけて充分天日に当てることが美味さの秘訣なのに、主人公は火であぶったりして短時間で美味さを出そうとして失敗。ここでも小手先やうわべだけでは駄目だということが主張されていた。
いつも念頭に置いていることではあるが、改めて2作品の共通のテーマ[手間」をかけることの大切さを設計者として肝に銘じておきたい。